☆病院給食の「献立」は、ただのレシピではない。それは緻密な計算と想いが織りなす「処方箋」だ。☆
こんにちは、Person’s株式会社です♪
私たちが普段、パソコンの前で頭を抱えながら向き合っている「献立作成」。
一般の方からは「毎日の食事メニューを考える仕事」と思われがちですが、
医療・福祉の現場におけるそれは、もはや「高度な数理パズル」であり、
同時に「想いを伝える手紙」でもあります。
今日は、現場の管理栄養士が日々格闘している、
この奥深い献立作成の世界について語ります。
1. 「常食」だけじゃない。無限に広がる展開の世界
家庭の献立と、病院・施設の献立の決定的な違い。
それは「展開(てんかい)」の複雑さにあります。
マトリックスのような食種管理
まず、基本となる「一般食(常食)」を作ります。
ここまでは家庭料理と同じかもしれません。
しかし、ここからが本当の戦いです。
病院には様々な病気や状態の患者様がいらっしゃいます。
・エネルギーコントロール食: 糖尿病や肥満の方向け(1200kcal, 1400kcal, 1600kcal…)
・タンパクコントロール食: 腎臓病の方向け(タンパク質40g, 50g, 60g… かつ塩分6g未満)
・脂質コントロール食: 膵臓病や脂質異常症の方向け
・易消化食: 胃潰瘍や術後の方向け
これらを、基本の献立をベースに、食材を差し替えたり、調味料を減らしたりして調整します。
これを「展開」と呼びます。
さらにここに、「嚥下形態(食形態)」の掛け算が加わります。
「一口大」「粗刻み」「極刻み」「ミキサー(ペースト)」「ソフト食(ムース)」……。
つまり、1つの「サバの味噌煮」というメニューが、病態と形態の組み合わせによって、
数十種類の異なる指示書へと枝分かれしていくのです。
この複雑なマトリックスを脳内で整理し、かつ調理員さんが間違えないような指示書に落とし込む。
これが医療献立の第一関門です。

2. 「美味しい」と「制限」の狭間で戦う葛藤
管理栄養士が最も悩み、そして腕の見せ所となるのが、「栄養価の縛り」と「味の追求」の両立です。
塩分6gの壁
ご存知の通り、高血圧や慢性腎臓病などの治療食における塩分制限は「1日6g未満」が基本です。
1食あたりわずか2g。 家庭で普通に味噌汁を作れば、それだけで1.5g〜2g近くいくこともあります。
普通に作れば「味がしない」と言われてしまう。
しかし、塩を足せば病気は悪化する。このジレンマの中で、私たちは魔法を使います。
・出汁(だし)の力: 昆布やカツオの旨味を濃厚に効かせて、塩気のなさをカバーする。
・酸味と香辛料: 酢、レモン、生姜、ニンニク、カレー粉、シソなどの香味野菜を使い、
アクセントをつける。
・メリハリ: すべてを薄味にするのではなく、和え物は薄味にし、
主菜にしっかり味をつけることで、食べた時の満足感を演出する。
「味が薄い!」というクレーム(ご意見)は、管理栄養士にとって耳が痛い言葉です。
しかし、退院時に「ここの食事で、薄味でも美味しく食べるコツがわかったよ」
と言ってもらえた時、その苦労は報われます。
コスト(食材費)という絶対的な天井
栄養価さえ満たせば何でも使えるわけではありません。
病院経営において、給食の食材費は非常にシビアです。
昨今の物価高騰は、献立作成を直撃しています。
予算オーバーのアラートが出た時、私たちはどうするか。
・肉の部位を変える(高い部位から安い部位へ、でも硬くならない工夫が必要)。
・旬の野菜(安くて栄養価が高い)を多用する。
・冷凍食材と生鮮食材のベストミックスを探る。
・乾物(切り干し大根や高野豆腐)などの安価で栄養価の高い食材を活用する。
1円単位の調整を繰り返し、電卓を叩き(今はシステムですが)、赤字を出さずに質を維持する。
それはまるで、企業の経営者のような視点が求められる業務なのです。
3. 調理現場への「設計図」としての責任
献立表は、厨房で働く調理師や調理員への「作業指示書(設計図)」です。
管理栄養士がデスクで適当な数字を入れると、現場は地獄を見ます。
工程と動線のシミュレーション
例えば、 「主菜:手作りハンバーグ」 「副菜:手作りコロッケ」 「汁物:具沢山豚汁」
「デザート:手作りゼリー」 という献立を立てたとします。
栄養価は完璧かもしれません。しかし、これを朝の忙しい厨房で実現できるでしょうか?
「丸める」「揚げる」「切る」作業が重なり、調理員さんはパニックになり、
提供時間が遅れるリスクがあります。
優れた献立とは、厨房の作業負荷(ワークバランス)まで計算されているものです。
「今日は主菜が手作りで手間がかかるから、
副菜はスチームコンベクションオーブンで焼くだけのものにしよう」
「揚げ物が続くときついから、明日は煮魚にしよう」
調理機器の空き状況、人の動き、作業時間。
これらを想像しながら組み立てる力こそ、現場を知る管理栄養士のスキルです。
4. 医療・福祉の献立における「行事食」の輝き
毎日続く治療食の中で、患者様や利用者様が唯一、目を輝かせて待っているもの。
それが**「行事食(イベント食)」**です。
季節を届ける使命
入院中や施設入所中は、どうしても季節感が失われがちです。
外の桜が見られない寝たきりの方にとって、
お盆の上の「桜餅」や「筍ご飯」だけが、春の訪れを教えてくれる便りになります。
・お正月のおせち料理
・土用の丑のうなぎ
・クリスマスのチキンとケーキ
・敬老の日の松花堂弁当
これらの献立を立てる時、管理栄養士の気合は最高潮に達します。
「普段は禁食(禁止食品)だけど、今日だけはどうにかして食べさせてあげられないか?」
医師や看護師と相談し、窒息リスクのある餅を「とろみ餅」や「ソフト大福」に変えたり、
形あるものが食べられない方には、
ミキサー食を型抜きして本物そっくりに見せる「再形成食」を提供したり。
そこには、**「食べる喜びを諦めさせない」**という、管理栄養士の執念にも似た情熱があります。
カードを添えたり、ランチョンマットを敷いたり。
栄養価計算の外側にある「心の栄養」を計算に入れるのも、私たちの重要な仕事です。
5. AIには作れない? これからの献立作成
最近はAI技術が進化し、
「冷蔵庫の中身でレシピ提案」や「栄養価計算の自動化」ができるようになりました。
「将来、管理栄養士の献立作

成はAIに取って代わられるのでは?」という議論もあります。
確かに、単純な栄養価合わせやコスト計算のパズルなら、AIの方が早いでしょう。
しかし、医療・福祉の現場には、**「データ化できない変数」**が無数にあります。
・「今週は気温が急に下がったから、温かい麺類に変更しよう」
・「A病棟の〇〇さん、最近食欲がないから、好物の煮物を入れてあげたい」
・「厨房のベテランパートさんが腰を痛めたから、来週は作業負担の少ない献立に修正しよう」
・「地域の特産品である〇〇野菜がたくさん寄付されたから、急遽メニューに組み込もう」
このような、患者様の顔色、スタッフの体調、地域の空気感、そして「ぬくもり」。
これらを総合的に判断し、最適解を導き出すのは、やはり人間の、そして管理栄養士の感性です。
AIを「計算のアシスタント」として使いこなしつつ、
最終的な**「食べる人の心に響く調整」**をする役割は、これからも残り続けるでしょう。
6. 結論:献立は、見えないところからの「応援歌」
患者様は、自分の食事を作った管理栄養士の顔を知らないことがほとんどです。
それでも私たちは、毎日パソコンに向かい、
0.1gの塩分、1円のコスト、1gのタンパク質と向き合い続けています。
それはなぜか。 お盆の上の食事が、患者様にとっての「治療薬」であり、
退屈な入院生活の中での「最大の楽しみ」であり、
生きるための「希望」であることを知っているからです。
「今日の食事、美味しかったよ」 下膳されたトレーに乗った小さなメモ用紙や、
病棟ですれ違いざまの一言。
その一言のために、私たちは数千回のクリックと修正を繰り返し、
365日3食の献立を紡ぎ出しています。
献立表のマス目を埋めているのは、単なる料理名ではありません。
「早く良くなってほしい」「少しでも楽しんでほしい」という、
管理栄養士からの無言の、しかし熱烈な応援歌なのです。
これから実習に行く学生さん、そして今まさに献立作成に追われている現役の皆さん。
あなたが作ったその献立は、確実に誰かの細胞となり、誰かの笑顔を作っています。
どうぞ、そのデスクワークに誇りを持ってください。
【まとめ】
・複雑性: 常食をベースに、病態ごとの栄養量と、
嚥下機能に合わせた形態へ展開する「マトリックス」構造。
・ジレンマ: 「減塩などの制限」と「美味しさ」の両立、
そして「コスト」との戦いが常にある。
・現場連携: 献立は厨房への「設計図」。
作業工程や動線までシミュレーションする能力が不可欠。
・心の栄養: 行事食は季節を届ける重要なツール。
AIにはできない「人への配慮」が専門職の価値。
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