栄養士・調理師の求人・転職・派遣なら|くっくビー

チャレンジする!を応援していく
栄養士さん 調理師さんのお仕事探しなら

CONTACT

TEL:0120-611-191
MAIL:

☆管理栄養士の配置基準「100床に1人」は適正か?現場のリアルとこれからの臨床栄養☆

こんにちは、Person’s株式会社です♪

病院で働いていると、必ず直面する「数字」の壁があります。

それが **「病床数に対する管理栄養士の配置人数」**です。

一般的に浸透している「100床につき1人」という基準。
これはあくまで最低ラインなのか、それとも十分な数字なのか。
今日は、病院管理栄養士の配置基準をテーマに、制度の背景から現場の実情、そしてこれからの働き方について深く掘り下げてみたいと思います。

1. 「100床に1人」という数字の根拠と歴史

まず、私たちがよく口にする「100床に1人」という数字がどこから来ているのか、
法的な根拠と診療報酬の仕組みから整理してみましょう。

医療法と診療報酬のギャップ

実は、医療法上の標準的な配置基準と、実際に病院が収益(診療報酬)を得るために求められる基準
には違いがあります。

・医療法上の標準: 医療法においては、実はもっと緩やかな基準が長らく存在していました(例:給食管理を行う場合など)しかし、これだけでは質の高い栄養管理は担保できません。

・診療報酬上の要件(栄養管理実施加算など): 現場の配置人数を決定づけているのは、実質的にこの「診療報酬」です。特に入院基本料の要件や、かつての「栄養管理実施加算」の要件として、「常勤の管理栄養士が1名以上配置されていること(特に100床以上の病院)」

というラインが強く意識されてきました。

なぜ「100」なのか

かつて、栄養士の業務は「給食管理(食事を安全に出すこと)」が主軸でした。
100人分の食事を管理し、献立を作り、発注をする。
この業務量であれば、1人で100床を担当するのは(調理員との兼ね合いもありますが)不可能ではありませんでした。

しかし、時代は変わり、現在は「臨床栄養(患者の病態を管理し、治療に貢献すること)」が求められています。NST(栄養サポートチーム)の稼働や、個別の栄養指導、ベッドサイドでのミールラウンド。これらを100人の患者様に対して1人で行うことの難易度は、昔とは比べ物にならないほど跳ね上がっています。


2. 1人で100床を担当する「現場のリアル」

では、実際に「100床に1人」の体制で働くと、どのような一日になるのでしょうか。急性期病院と療養型病院で多少異なりますが、一般的な「1人配置」の過酷な現実をシミュレーションしてみます。

終わらないスクリーニングと計画書作成

入院患者様には全員、特別な栄養管理の必要性があるかどうかの「栄養スクリーニング」を

行い、それに基づいた「栄養管理計画書」を作成しなければなりません。

・100床が満床の場合: 単純計算で100人分のデータを把握し続ける必要があります。

・入退院の回転: 急性期病棟で平均在院日数が14日だとすると、毎日約7人が退院し、新しく7人が入院してきます。つまり、毎日7人分の新規計画書を作成し、7人分のサマリー(経過報告)を書くことになります。これだけで午前中が終わってしまうことも珍しくありません。

「給食」と「臨床」の板挟み

「100床に1人」の現場では、給食管理部門と臨床部門が分かれていないケースが大半です。つまり、病棟に行こうとした瞬間に厨房からトラブルの連絡が入ります。

・「〇〇さんの食形態、これであってますか?」

・「発注ミスで食材が足りません」

・「調理機器が故障しました」

これらの対応に追われていると、本来時間をかけるべき「食欲不振の患者様への聴き取り」や「医師への処方提案」がおろそかになりがちです。結果として、「書類上の栄養管理はできているけれど、実質的な介入ができていない」というジレンマに陥る管理栄養士は少なくありません。

山積みのカルテとPCに向かいながら、PHSで厨房からの連絡に対応している、少し疲れた様子の管理栄養士のイラスト。背景には病棟の廊下が見える。


3. 2024年診療報酬改定が示す「これからの基準」

令和6年(2024年)の診療報酬改定は、管理栄養士の配置や業務内容にとって大きな転換点を含んでいました。国の方針は明確に「より手厚い配置」と「質の高い栄養管理」へとシフトしています。

GLIM基準の導入と高度なアセスメント

今回の改定の目玉の一つは、低栄養の診断基準として国際的な枠組みである「GLIM基準(グリムきじゅん)」の導入が推進されたことです。 これまでの「体重が減った」「アルブミンが低い」といった単純な指標だけでなく、筋肉量の減少(サルコペニア)の評価など、よりフィジカルアセスメントの要素が強い評価が求められるようになりました。

これを「100床に1人」で全員に対して正確に行うのは、物理的に限界があります。国もそれを理解しており、特定集中治療室(ICU)や回復期リハビリテーション病棟などでは、専任・専従の管理栄養士配置を高く評価する(高い点数をつける)仕組みを強化しています。

「特定機能病院」や「集中治療室」での変化

高度急性期においては、すでに「100対1」ではなく、「病棟専従(1病棟に1人、つまり50床程度に1人)」の配置が標準化しつつあります。 ICU(集中治療室)における早期栄養介入管理加算などは、管理栄養士が常駐し、毎日の回診に参加することで初めて算定できるものです。ここでは、「厨房業務を兼務しながら」というスタイルは通用しません。

つまり、これからの病院栄養士は、以下の二極化が進むと考えられます。

・ジェネラリスト型: 100床程度を広く浅く見つつ、給食管理も統括する(従来型)。

・スペシャリスト型: 特定の病棟(50床以下)に常駐し、濃厚な臨床介入を行う(新型)。


4. 100床に1人でも「質」を落とさないための戦略

とはいえ、すぐに人員が増やせる病院ばかりではありません。経営的な事情により、明日からも「100床に1人」で戦わなければならない管理栄養士の皆様へ、質を担保するための具体的な戦略を提案します。

優先順位のトリアージ(選別)

100人全員に全力投球するのは不可能です。そこで、入院時のスクリーニングで患者様を明確にランク分けします。

・高リスク群(介入必須): NST対象、褥瘡あり、経管栄養、食欲不振。ここは毎日確認。

・中リスク群(観察): 状態は安定しているが、リスク因子あり。週1〜2回の確認。

・低リスク群(維持): 若年層の短期入院、検査入院など。計画書作成と退院時指導のみ。

この「諦める勇気(メリハリ)」を持つことが、高リスク患者様を救うことにつながります。

タスク・シフティングと多職種連携

「食事のことは全て栄養士」という抱え込みを捨てましょう。 例えば、日々の食事摂取量の記録や、体重測定は看護師や看護補助者の方々の協力が不可欠です。また、嚥下機能の評価は言語聴覚士(ST)と協働することで、重複した評価業務を減らせます。

重要なのは、「栄養に関する判断の基準」を共有することです。 「なんとなく食べていない」ではなく、「主食が半分以下の日が3日続いたら栄養士に連絡する」というような明確なルール(プロトコル)を病棟に浸透させることで、管理栄養士が常に見回らなくても、必要な情報が上がってくる仕組みを作ります。

③ ICTの活用

最近の栄養管理システムは非常に優秀です。電子カルテと連動し、アルブミン値の低下や体重減少をアラートで知らせてくれる機能がついているものも多いです。 自分の足で情報を探しに行く時間を減らし、システムが抽出した「危ない患者様」の元へ足を運ぶ。デジタルの力で100人を見る「目」を増やすイメージです。


5. 管理栄養士の配置が増えることのメリット(経営層への訴求)

もし、あなたが現場のリーダーで、病院長や事務長に「もう1人増やしてほしい」と交渉する場合、どのようなロジックが必要でしょうか。「忙しいから」では人は増えません。病院にとってのメリット(利益)を提示する必要があります。

収益への貢献(加算の算定)

最も直接的なのは、診療報酬上の加算です。

・栄養サポートチーム(NST)加算

・入退院支援加算

・回復期リハビリテーション病棟入院料における栄養体制の評価

人員が増えることでこれらの加算を漏れなく、かつ件数を増やして算定できれば、管理栄養士1人分の人件費以上の収益を生み出せる可能性があります。試算表を作成し、具体的な数字でプレゼンすることが重要です。

平均在院日数の短縮と稼働率

適切な栄養介入は、術後合併症を減らし、リハビリの効率を上げ、結果として患者様の早期退院(在院日数の短縮)に寄与します。 DPC(包括払い制度)を採用している病院であれば、在院日数の短縮は病院の利益に直結します。「栄養管理で在院日数を1日短縮できる可能性」を論文データなどを用いて説明することは、非常に説得力があります。

医療事故・紛争の防止

誤嚥による肺炎や窒息、アレルギー対応のミスなどは、病院にとって大きなリスクです。人員配置に余裕ができることで、ダブルチェック体制が強化され、これらのリスクを未然に防ぐことができます。これは「見えないコスト」の削減といえます。

医師、看護師、薬剤師、理学療法士、そして管理栄養士がテーブルを囲み、1人の患者の資料を見ながら真剣にディスカッションしている多職種カンファレンスの様子。


6. 結論:これからの病院管理栄養士のあり方

「100床に1人」という基準は、現代の高度な医療ニーズに照らし合わせると、決して「十分」とは言えないのが正直なところです。しかし、制度が変わるのを待っているだけでは、目の前の患者様は救えません。

チーム医療のキープレイヤーとして

これからの管理栄養士に求められるのは、単独で戦う力ではなく、「チームを動かす力」です。 100人の患者様を見るために、看護師の目を借り、医師の権限を借り、リハビリスタッフの情報を借りる。その中心で情報の交通整理を行い、最適な栄養プランを提示する「コーディネーター」としての役割が強くなっていくでしょう。

配置基準を超えた価値を

今後、診療報酬改定のたびに、栄養管理への要求は高くなり、それに伴い評価(点数)も細分化されていくはずです。その時、「うちは100床に1人だから無理」と諦めるのか、それとも「システム化とチームワークで乗り切る」のか、あるいは「実績を作って増員を勝ち取る」のか。

病院管理栄養士という仕事は、患者様の「生きる力」の根幹である「食」を支える、非常に尊い仕事です。 配置基準という数字の壁に悩みながらも、日々工夫を凝らして病棟を走り回っている皆様。その努力は、必ず患者様の回復という形で結実しています。 現状を嘆くだけでなく、データと情熱を持って、より良い栄養管理体制を自らの手で築き上げていきましょう。


【まとめ】

・「100床に1人」は診療報酬上の要件がベースだが、臨床業務の増大により現場は逼迫している。

・GLIM基準導入など、質の高い介入が求められる今、業務のトリアージとICT活用が必須。

・増員交渉には「忙しさ」ではなく「加算」「在院日数短縮」などの経営メリットを提示する。

・1人で抱え込まず、多職種を巻き込んだチーム医療のハブになることが解決の鍵。

Person’s株式会社では、病院、介護施設、ホテル、保育園、食品製造工場、飲食店など 管理栄養士・栄養士・調理師・調理補助のお仕事の求人をご用意しております♪
新着求人を日々掲載していますので、お仕事をお探しの方はこの機会にいかがでしょうか?
詳しくは栄養士・管理栄養士・調理師の求人・転職・派遣ならくっくbee

管理栄養士コラム一覧に戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加